鍵物語・일본어열쇠이야기

日本在住の韓国人と日本人のための「和얼」Jeremy's Cafe

鍵物語 つづき6

 
怒っているTheeの口元の奥に見える隠しきれない笑顔が。


ジェレミがTheeの声を聴いたのは、その鍵が動いたからだ。
Theeがジェレミに会いたいという思いによって、鍵は動いた。


ジェレミはTheeに会いたいと思っていなかった。
会いたいという気持ちよりは、すごく気になっていた。


ある日突然、ジェレミの前から、 町からいなくなってしまったTheeのことが
すごく気にはなっていた。


むしろ、会いたくなかった。
Theeの怒りの言葉と悪口のことばの奥に流れている
Theeのつめたい涙を、これ以上見てしまうと、
ジェレミはTheeから、離れられなくなる。


ジェレミの定められているあの道を歩めなくなる。
生まれる前から定められているあの道、
病にかかり、死んでいても、生き返らせられ、四つ足で歩かせられているあの道。


Theeのあのつめたい涙をこれ以上感じてしまうと、ジェレミはきっと、 あの道とTheeのどっちかの選択をするように迫られてしまう時が来る。


ジェレミは、その選択の時が来ることが怖かった。
あの道とTheeのつめたい涙。


決して、Theeのつめたい涙で、 ジェレミ自身が報われることはないことなど、
わかっていた。
それでも、Theeのあのつめたい涙を選ぶことになると、
きっと死ぬまで、 あのTheeのつめたい涙を見つめて生きていくだろう。


何を求めることもなく、ただ見つめ、ただ心痛め、ただ共にいて
涙を見ている一生を生きるだろう。


それでも良かった。 それでもTheeのそばでいたいという気持ちを
選択してしまうのだろう。


だから、怖かった。もう会うことが怖かった。
選択の日が必ず来てしまう。。。


選択を迫られることが、 選択をしなければならないその時が来ることがこわかった。


だから、これ以上会いたくなかった。


しかし、会いたかった。一度は会いたかった。


会って、ずっと考えていたあのプレゼントを渡したい。


それを渡し、終わりにしなければならない。


鍵がきっと一度は合わせてくれるだろう。


ジェレミのことを全く思っていないTheeでも、
その奥のつめたい涙が一度はジェレミを会いたいと思ってくれるだ ろう。


ジェレミはハンカチを作って、待っていた。
ハンカチは、ジェレミの国では、 涙を拭いて別れましょうと意味がある。
別れるときに、ハンカチを渡すという風習も、昔からあった。


ジェレミは最初は、 あのつめたい涙をふいてあげたいという気持ちだった。
人が泣いているなら、それがだれであろうが、 拭くものをさしあげることは
たったあることだから。


最初は、ただそれだった。Theeに次に会う時、
Theeは自分のことで、涙目になるだろうから、 その時のために、
ハンカチを作ってあった。


しかし、その後、ばったりとTheeに会えなくなった。 いなくなかったのだ。


ジェレミは待っていた。鍵が動くことを。きっと動くだろう。


そして、動いたのだ。


ジェレミは、いつの間にか、 Theeの家のあの豪華絢爛な応接間にいる。


Theeの歌声は、実に美しかった。


幼い頃から楽器を習い、 声歌を生活の糧とする人々のために設けられた学校に
通っていたことは、以前、 Theeから人に言いたくないという口調で、 聞かされたことがある。


美しい楽器の音と、それを上回る声歌を聞きなが、
今まで食べたことのない料理を口に入れているジェレミのもう一つ の手の中には、
ハンカチが握られていた。


そして、Theeの声歌が終わるときまで、 ジェレミはTheeのことをずっと見つめていた。


すると、Theeはあの怒った顔のまま、 ジェレミの向かい側にすーとすわった。


ジェレミはハンカチの入った包みを、何も言わず、渡した。


すると、妙に気持ち悪そうな顔で、


「何?。私の誕生日のこと、知っていたの?」と言った。


ジェレミは顔を左右に振りながら、「誕生日だったですか?」
ジェレミは今、知ったのだ。


Theeは顔を固くしたまま、口元だけ、ほんの少し笑っていた。
そして、そのつつみをほどいた。
ハンカチだった。


そのハンカチでTheeの顔に、今までは一度もなかった、
Theeの今の気持ちが明らかに表れた。