鍵物語つづき2
Theeは、まるで思い出を楽しむかのように、人の悪口を言っては笑い、
そして、自分の悲しみについて、ときに泣きながら、ジェレミに辛うじて聞こえるように呟いていた。
ジェレミは優しい笑顔で聞いているだけだった。
Theeのつぶやきは、小さすぎて、よく聞こえなかったからだ。ときとき途切れるTheeの声に必死に笑顔で答えていたのだ。
その途切れて聞こえない内容を、ジェレミは知ってしまうのが怖かった。その悲しみと怒りに小さく震えながらのTheeの声が、その中身が怖かった。
ジェレミは、Theeの悲しみを深く知りたくなかった。理解したくなかった。
Theeの悲しみに近づきたくなかった。
ジェレミは、Theeの苦笑の奥にあるTheeの痛みが、その悲しみの向こう側に隠されてある怒りのあまりにも鋭い刃に触ることがこわかった。
ジェレミのいたみが重かったからではない。
その悲しみの刃で、自分の指が切られたくないからではない。
ただ単に、わかっていくことがこわかった。
知っていくことが恐かった。
Theeeのことを理解することが、Theeeのことをやさしくつづみたくなる自分の心がこわかった。
そのやさしい笑顔で包みたくなるその心で、いつの間にか、心臓の激しい振動によって、
ジェレミの体をすみずみまで揺らしてくいくだろうという気がすることがこわかったのだ。
自分のTheeへのやさしい気持ちが生まれて来ることがいやではないことがこわかった。
気にはしていないけど、町の人々にTheeと会っていることは、もう知られていた。
ちょっとした事件が起きた。もめごとだ。Theeがまた人のことを無視し罵り、悪口を言ったのだ。苦笑ではなく、ひどくからかってしまった。
その相手はそんなに悪くないところか、何かでむしゃむしゃしていたTheeが、通り過ぎる人の後ろで、根も葉もない理由で、悪口をつぶやいているのを、その当本人に聞こえてしまったのだ。
もう、この街では、住めなくなった。Theeはその街から夜逃げするように逃げてしまった。突如、いなくなかった。
そして、どこかに流れ着いたTheeは心でこう思った。ジェレミに会いたい。
実のところ、Theeはジェレミのことがとりわけ好きではなかった。
好きとかの感情は全くもって、なかった。
ただ、あの町で、自分の話をきいてくれるなら、誰でも良かったのだ。
でも、実は、ジェレミだけは正直いやだった。
ジェレミと一緒にいるということを人に見られること自体、非常に恥ずかしかった。
だって、Theeは驚くほどの美人だった。その外見は、まるで朝に生まれたての美しい花、そのものだった。
美しいと言われるバラの花たちが美しい自分たちの姿を咲き誇っている花畑の中でも、圧倒的な美しさを持って、特別な雰囲気を放っている花のように、Theeは美しかったのだ。
だから、最初、Theeeの姿に、男性ならだれでも一目惚れするように、Theeの回りに群がって来るのだ。
しかし、