鍵物語つづき1
知ってたでしょう。私に昨日何があったのか。
大きな荷車にひかれて、下敷きになって、死にかけたのよ。
なぜ、私のところに飛んできてくれなかったの?
なぜなの?あなた、知っていたのに・・
ジェレミは何も答えることが出来なかった。その通りだった。知っていた。
見たわけではない。
昨日のお昼すぎだった。急に疲れを感じ、机の上で、少し居眠りしたかのような、夢のようなのを見た。THeeだった。大変なのだ。
Theeはあまりの急な事故に遭っていた。驚きのあまり、怪我の痛みも感じられない状態だった。しかし、誰も彼女を助ける人はいなかった。人が周りにいなかったわけではなかった。
町の有名な悪い性格の彼女に襲ってきた不幸を、むしろ少し笑っているかのようだった。
今、Keyを通して、聞こえてくるTheeのなぜなの?それは、きっと昨日、ジェレミが見た時と同じ時間で起きていた、彼女の、ジェレミへの叫びだったのだ。
ジェレミは知っていた。わかっていた。
でも、何もやってあげてはいけないということもまたわかっていたのだ。
ジェレミは、Theeのことを気にし始めたのは、ジェレミがこの街に移ってきて、しばらく経ってからだ。
街の人々が嫌がり、悪口を言っているTheeのことだから、きっとどこかで、何回かは会っていて、その人があの人かと、思ったかもしれない。
でも、ジェレミは全く覚えていなかった。
ある日、街を歩いていTheeのことに目が止まった。泣いていた。
しかし、回りの人々は、彼女が泣いていることに気づいていなかった。
ただ、Theeから少し離れて通り過ぎているだけだ。
ジェレミは彼女の涙が見えていた。なぜかは、わからない。
その時だった。ジェレミは、自分自身も驚くようなことを彼女に言った。
「その怒りの涙が枯れるまで、僕に怒ってください。これから、また、その涙が出るどきには、いつでも、僕に怒ってください」
Theeの怒りは、それ切り、ジェレミに刃を向けることはなかった。
ジェレミは、最初、街の人々の目を避けて、Theeに会った。
天気が良い日には、森の中の小さな小川のほとりで、雨の日には、町外れの飲み屋で、
暑い日には、お昼もっとも暑い時間に、誰も来ない町の真ん中にある井戸の水を汲みながら、会っていた。
いつも二人きりだった。最初、ジェレミは、それがいやだった。
街の人々に見られ、知られたくなかった。噂されるのが怖かった。
二人で会うと、Theeはいつも自分のことばかり、喋っていた。
ジェレミのことには、全く興味がなかった。
ひったすら、Theeは、自分の悲しみを話し続けた。時には、泣き、ときには怒っているのだった。
ジェレミは、黙って聞くだけだった。一言も言わず、ただ単に聞いては、うなずき、
聞いた。
そして、そんなTheeが少し変わり始めた。変わったのは、その悪い性格ではなかった。
いや、その悪い性格は、ますます酷くなっていた。ほかの人を無視し、悪口を言っては、また、嘲りの苦笑をしている。